セットバックとは?道路との関係と、登記上の注意点〜「みなし道路」「再建築可否」との関係を、土地家屋調査士が解説〜
1.はじめに
不動産取引に携わっていると、「セットバックが必要な土地です」「前面道路が42条2項道路です」といった説明を耳にすることがあります。
なんとなく「道路が狭い土地の話かな?」と理解していても、実際にお客様から聞かれると、正確に説明するのは難しい…と感じる営業担当の方も多いのではないでしょうか。
セットバックの有無は、再建築の可否や土地の有効面積、評価額に大きく関わる重要なポイントです。
この記事では、土地家屋調査士の立場から「セットバックとは何か?」をわかりやすく解説し、実務上どのような影響があるのか、不動産営業の現場で役立つ情報をお届けします。
2.そもそも「セットバック」とは?
セットバックとは、建築基準法上の道路が幅員4mに満たない場合に、道路の中心線から2m後退した位置まで自分の敷地を後退させることを言います。
この制度は、都市の安全性や避難経路の確保のために定められており、将来的に道路を4m幅に拡張することを見越して敷地の一部を提供する仕組みです。
↓ポイントは以下の通り
- セットバックが必要なのは、「建築基準法上の道路」に接していて、幅が4m未満の場合
- セットバック部分は、建築物を建てることができない(→事実上、使えない土地になる)
- セットバック後の「有効宅地面積」で再建築や評価が判断される
3.『みなし道路』とは?再建築に影響する重要キーワード
セットバックと合わせて理解すべきなのが、「みなし道路(42条2項道路)」という概念です。
■ 42条2項道路とは?
幅員が4m未満の道路であっても、以下のような条件を満たせば、建築基準法上の道路として“みなす”ことができます。
- 昭和25年(1950年)の建築基準法の施行以前から、すでに存在していた道であること
- 特定行政庁(建築審査課など)によって、認められていることつまり、「昔からある狭い道路」だけど、再建築のための条件をクリアしている道路がこの42条2項道路です。
ただし、再建築の際にはセットバックが必要になるため、建て替え可能だけど、敷地が狭くなるという点がネックになることがあります。
4.実務でよくある疑問と注意点
Q. セットバックの範囲は、どうやって判断するの?
→ セットバックの判断には、道路の中心線の特定や現地の道路幅員を測ること、隣地との境界確認が不可欠です。
中心線が明確でない場合や、道路幅員があいまいな場合には、土地家屋調査士による正確な測量・役所調査・境界確認が必要になります。
現地調査だけで「たぶんこのへんまで」と判断するのは非常に危険です。
場合によっては数十cm〜1m以上の誤差が生じ、後々のトラブルにつながることもあります。
Q. セットバック部分は誰のもの?登記はどうなるの?
→ 基本的に、セットバック部分の所有権はそのまま敷地所有者にあります。
ただし、用途は制限され、建物は建てられません。
また、自治体によっては、セットバック部分を「寄附」や「無償譲渡」によって道路敷地として取り込むことを求めるケースもあります。
寄附によって法務局で地目変更・地積更正登記などが必要になることもあり、事前の調整が重要です。
5.不動産営業担当が押さえておきたいポイント
①「道路に面している=安心」とは限らない
→ 接道義務は「建築基準法上の道路」かどうかで決まります。
② 売買前に役所で接道状況を確認する
→ 幅員、42条2項指定、セットバック要否をチェック。
→ 「道路境界確認図」や「道路台帳」などの資料確認が有効。
③ 現地確認と専門家の助言を併用する
→ 境界杭が見えない場合や、古い図面しかない場合は、土地家屋調査士に相談を。
→ 再建築に関わる重要ポイントなので、営業トークにも説得力が生まれます。
6.まとめ セットバックの知識は、信頼と安心につながる
セットバックの知識は、少し専門的で難しそうと思われがちですが、不動産取引においてはお客様の信頼に直結する重要ポイントです。
「この土地、再建築できると思ってたのにできない」
「思ったより建てられる面積が小さかった」
こうしたトラブルは、事前にセットバックや接道条件を確認していれば防げるものばかりです。
営業担当者として、お客様に安心して取引していただくためにも、ぜひ「セットバック=プロが確認すべき要チェック項目」として意識してみてください。
もし現地の状況や図面だけでは判断が難しい場合は、土地家屋調査士にご相談いただければ、道路幅員の確認やセットバックの要否の調査をサポートいたします。
土地家屋調査士法人 BASE ONE(旧 ハヤシ登記測量事務所)
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